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私だけの赤(1)「リップスティック」

恋愛ものですがちょっぴりコワいかも

結婚3年目の佐緒理と祐樹。
祐樹のために料理を頑張る佐緒理。結婚記念日に贈られた物とは?
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「佐緒理」
「え、なあに、祐樹」
バルコニー越しに朝の光が差し込む、築12年の瀟洒なマンションの2階リビング。
輸入食品会社に勤める夫に身支度の手を止めて名前を呼ばれ、
佐緒理は怪訝そうに首を傾げた。
「今日、3回目の結婚記念日だったろ」
「覚えててくれたんだ!……忘れてるかと思った」
「忘れるわけないだろ。それに実は昨日の夜、テーブルの後ろの棚に佐緒理の書いたメモがあるの、見ちゃって」
佐緒理は祐樹に黙って記念日のために豪華なフレンチを作ろうと思い、
材料や盛り付けのイメージを書いておいたのだった。
「ええ、あれ見たの?」
照れた笑顔を向ける。
「……これ。プレゼント」
祐樹は足元に置いた鞄から包装紙に包まれた小さな箱を取り出した。
「ええっ?」
佐緒理は箱を受け取ると、箱と夫に向けて視線を往復させた。
「開けてみて」
佐緒理が箱のリボンを解くと、蓋がずれて中から小さなリップスティックが
姿を見せた。
「こ、これ私が欲しかった新作の赤い色!」
「佐緒理、最近これのCМが流れるとよく見てたから」
「ありがとう!」
佐緒理は祐樹に抱きついた。
「おっと、勘弁してくれよ」
テーブルの上に並んだ朝食のピザトーストのケチャップが
危うく今さっき着たばかりのシャツにつきそうになって、祐樹は苦笑した。
「今夜、その口紅つけて待ってて。なるべく早く帰ってくる」
「うん、わかった!」
身支度を整えた祐樹はトーストを一口齧りコーヒーを飲み干すと、
鞄を取り急いで玄関へと向かった。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
祐樹を見送った佐緒理は洗面台へ向かうと、
そっとリップスティックのキャップを開けた。

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