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あの子、転校したんだって(2)

次の日。
学校の朝礼時にボヤ騒ぎがあったことが伝えられた。
昨日の夜、校庭の隅の掃除用具置き場の中で枯葉が燃え、当直の用務員がすぐに気付いて消し止めていた。

「……ねえ。あの子じゃない?」
「えっ? あの子って、どの子?」
「しっ。それは言わない約束でしょ?」
「そうよね、だってあの子、うちの学校にはもういないんだもん」
美術の時間、誰もモデルになってくれないので自分で自分の片手を描きながら、聡美は痛いほど視線を感じていた。
授業が終わりクラスメイトが皆教室へ戻り、一人残った美術室で聡美は呟いた。
「そうよ。私はいないんだもん。私がやったんじゃない」

家政科の調理実習で、三人ずつの班で調理をして味見をしあうときでも、聡美は一人で調理をして一人で食べた。
聡美は自分の方を見ないようにして通り過ぎた担当の先生の横顔を、遠くから眺めていた。
「……先生。今日透明人間が洗剤を少しみんなのスープに入れました。もちろん先生のにも。でも犯人はこの学校にいない人だから、関係ないよね」

次の国語の時間にお腹が痛くなったり、気持ちが悪くなった何人かが保健室へ行った。
聡美は相変わらず列ごとに教科書を読む順番を飛ばされた。

今日の授業はすべて終わり、また掃除のときに聡美は一人になった。
聡美は表情を変えずに集めた枯葉やゴミを捨て、真っ直ぐに美術室へ向かった。
「明日から彫刻ね」
その手に鋭い彫刻刀を握り締めた。
聡美は安心したように笑った。

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