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あの子、転校したんだって(1)

いじめ・無視が題材です
どこかに必ず救いはある

聡美は今日も一人、授業を受けて、給食を食べ、掃除をして帰る。
学校にはたくさんの人がいるのに。
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「ねえ、知ってる? 白岩聡美って子のこと」
「え? 知らない。そんな子、いたっけ?」
学校の午前中。
白岩聡美は教室の一番後ろの窓際の席で、クラスメイトたちが自分のことを話すのを俯いたまま聞いていた。
「ああ、前いたらしいけど、転校したんだって」
「そうなんだ。じゃあ早く机と椅子も片付けちゃえばいいのにね」
ヒソヒソ。クスクス。
こんな状態が、もう二週間も続いている。

給食の時間。
先週から、聡美が配膳の列に並んで順番がきても、聡美の前と後ろの子にしかよそってもらえなくなっていた。
今日も聡美は給食当番がみんなの分を配り終えた後、みんなが食べ始めてから急いで自分の皿に給食をよそって席に戻る。
なぜか自分の分のデザートやパンがないことが時々あった。
それでも聡美は自分が給食当番になったら、と思って我慢した。

午後の体育ではペアで体操をやることになった。
「先生私一人余っちゃったあ!」
笑いながら言うバスケ部の子に、先生は「あらあら仕方ないわね、先生と組もうか」と言って笑った。
クラスメイトたちも笑った。
聡美は笑わずに一人で体操をやっていた。
本来ならペアを組んでやる体操なのでやっているふりをするほかはなかった。
聡美が動作を間違えると、どこからかいつものようにヒソヒソ、クスクス、の声が漏れた。

帰る前の掃除の時間。
聡美が校庭の一番端をほうきで掃き終わり、ちりとりの中のゴミを捨てようと同じ班の子たちのいたところへ戻って来ると、もぬけの殻だった。
用務員がもうみんな帰ったよ、と教えてくれた。
それから聡美は自分の影が暗くなってきた景色に溶け込み始めるまで、校庭の花壇前のベンチに座っていた。
「……私、もういないんだ」
カラスが、寝床へと鳴きながら戻っていく。
「……私、この学校には、いないんだ」
聡美はまだ握りしめていたちりとりから足元に零れ落ちた、枯葉やゴミをじっと見つめた。


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